六甲全山縦走 加藤文太郎の道を歩く 2015年6月13日
六甲全山縦走の元祖であり、単独行によって数々の登攀記録を残した伝説の男。
小説、漫画の「孤高の人」のモデルにもなっている人である。
非常に歩くスピードが速かった加藤文太郎は、早朝に須磨を出て六甲全山を縦走し、
宝塚に下山した後、その日のうちに、また歩いて須磨まで帰って来たといわれています。
距離はおよそ100km。 加藤文太郎の様に往復しようとチャレンジしてきました。
私にとって六甲全山縦走路は非常に馴染み深く、思い入れのあるルートです。
過去の記事はコチラ → 六甲全山縦走大会 2013年11月10日
→ 六甲全山縦走大会に向けて練習登山 2014年10月26日
→ 六甲全山縦走大会 2014年11月9日
今回は暑い日中を避けて午後から出発し、ナイトハイクで抜ける計画でした。
14:17 須磨浦公園 出発。
天候は曇りで蒸し暑いものの、海からの風で涼しさは感じられます。
初めはウォーミングアップも兼ねて軽めのペースで緩やかな階段を登る。
14:38 旗振山 通過。
ちょっと遅目のペース。 去年のベストコンディションよりは足が重く感じます。
曇り空で明石海峡大橋は望めず。 天気が良ければ最高の眺望が望めます。
暑さを避けて遅めの出発でしたが、どうしても汗が吹き出してきます。
夏季の全山縦走は暑さ対策と水分補給の対策がゴールへの鍵となります。
全山縦走路の初めの難関、400階段。 ここはペースよく一気に登ります。
この階段を一定のペースで一気に登り切れない様では全山縦走はクリア出来ません。
15:09 栂尾山 通過。
ここでシューズに入った小石を取り除き、3分程インターバル。
振り返ると、これまで進んできた山々を望むことが出来ます。
400階段を過ぎると、菊水山までは割りと緩やかなアップダウンを繰り返します。
15:21 横尾山 通過。
眼下に望む神戸の街。 曇り空で美しい海を望むことは出来ませんでした。
全山縦走路の中で最も危険な場所の一つ、須磨アルプス。
15:28 馬の背 通過。
ここでの無茶な追越や余所見をしながらの通過は非常に危険です。
須磨アルプス、東山を経て妙法寺へ。 東山下山後は暫く市街地を歩きます。
15:56 妙法寺小学校前交差点 通過。
荒熊神社を経て安井茶屋前広場。 ここは水場もトイレもあります。
いつもながらに可愛い猫達が出迎え&見送り。 心が安らぐ瞬間です。
丸山町市街地に出るまでの砂防ダム付近、美しい紫陽花が咲いていました。
17:08 鵯越駅 通過。
思ったより足が重く、非常にゆっくりとしたペースで進んできています。
駅の脇を抜けて暫く進むと、前半のハイライト、菊水山への階段地獄。
不思議なことに今まで程は辛くなく、案外すんなりと登れてしまいました。
ゆっくりとしたペースで、しっかりと一定のペースで登ったお陰かもしれません。
途中で振り返るとこれまで進んできた縦走路の山々が望めます。
18:00 菊水山 山頂 通過。
菊水山の山頂を経て天王吊橋を目指す途中で痛恨の道間違い。
何故か中里町の方へ降りて行ってしまい、途中で引き返した為に20分のロス。
元のルートに復帰し、急いで天王吊橋を経て鍋蓋山へ取付き。
18:53 鍋蓋山 山頂 通過。
ハイドレーションには水。 そろそろスポーツドリンクが欲しくなってきました。
大龍寺に着いたら自販機でドリンクを買って軽食をと考えていました。
しかし大龍寺に着くと、何と自販機が撤去されておりショックを隠せませんでした。
仕方なく市ヶ原に隣接する桜茶屋まで自販機が無いので我慢することに。
日没に差し掛かり、辺りは暗く、私のテンションも一気に下がってしまいました。
19:33 市ヶ原 通過。
やっとジュースが飲めると思ったその時、桜茶屋前の自販機で絶望。
何と営業時間外は自販機もオフになっていて購入出来ません。
今思えば、この時点でリタイアしておくべきだったかもしれません。
既に辺りは真っ暗で、ヘッドライト無しでは進むことは不可能でした。
水分補給は掬星台まで耐えれば何とかなりますが、それ以上の脅威が待ち構えていました。
それは虫の大群。 無数の蛾の飛来、蜘蛛の巣、足元はムカデと甲虫。
稲妻坂からは体中に糸が絡まり、ヘッドライトは誘蛾灯の如く虫を呼び寄せます。
顔中が蛾だらけになり、油断した時に蛾が口内に侵入してきました。
無数の蛾が顔に張り付いている為に口を開けれず、取出すことも出来ない。
口の中でバタバタ暴れる蛾は最悪で、結局噛み殺すしか出来ませんでした。
私は人生で初めて蛾を食すことになったのです。 しかも胴体が親指程の蛾をです。
蛾の食感はウニュっとしたモノが出てきて非常に苦く、口内が痺れました。
この時点で私の心は折れてしまい、どこでリタイアしようかばかり考えていました。
21:01 掬星台 到着。
命からがらに虫の脅威から抜けだして掬星台に到着。
またもや蛾だらけのトイレで口を濯ぎ、ようやく自販機でドリンクを購入。
一息入れて夜景を撮影。 周りはカップルだらけで自分が場違いな気がしました。
眼下に望む人間の世界に戻りたいと願う者とそうでない者がいる。
漫画版「孤高の人」でこのようなフレーズが印象に残っています。
私はどちら側の種類だろう? 恐らく私自身は後者だと思います。
ただ、今日だけは虫地獄に心身を蝕まれて、心から家に帰りたいと願っています。
それなのに気がつけば私は宝塚に向けて出発していました。
暗く恐ろしい、人を寄せ付けない虫の世界。 アゴニー坂を進みます。
ここで本日2度目のルートミス。 車道から山道への取付きを見逃してしまいました。
対向から来た車のヘッドライトが眩しく、気が付かぬ内に通り過ぎていたようです。
結局、車道を通って大幅に遠回りしてかなりのタイムロス。
唯一救われたのは、車道は山道と違って殆ど虫が居なかったことです。
22:50 丁字ヶ辻 通過。
恋人達の集う六甲山ホテルの前を経て一軒茶屋を目指します。
別荘地、ゴルフ場、ガーデンテラス、極楽茶屋跡を経て六甲山最高峰へ。
距離が長くなってしまうけれども、どうしても山道ではなく車道を歩いてしまう。
あれだけの虫の恐怖にさらされると、無意識に山道を避けてしまいます。
00:16 六甲山最高峰到着。
思えば久しぶりの最高峰。 初めて訪れてから、実に2年ぶりの再訪になります。
人間、蛾を食してしまって疲弊しきるとどうなるか。 こんな顔になります。
放送事故レベルのトリップ状態の表情。 どれだけ辛かったかご想像下さい。
最高峰からの夜景。 この辺りから雨がパラつき始めました。
都合の良い言い訳になりますが、雨を理由に宝塚でリタイアすると決めました。
一軒茶屋を経てトンネルを抜けたら最後の山道を進むことになります。
正直なところ、ここからは惰性でもゴール出来てしまう程イージーです。
但し、ナイトハイクで視野が狭いためにスピードは出せません。
分かりきっていたことですが、山道にいる間はほぼこの状態。
とてもじゃありませんが、速度を上げて快適に進むことなど不可能です。
この後、先ほどに加えて2度も蛾が口の中に入り、追加で食することに。。。
諺通り、「2度あることは3度ある」 身を持って経験したくはありませんでした。
更に心をへし折られ、見通しの悪い下りを足早に注意深く下りて行きました。
01:17 船坂峠 通過。
この真っ暗な登山道で、顔全体が蛾に覆われて気が狂いそうでした。
本当に不愉快で、何度か正気を失ったように叫んでいたと思います。
もっとも、叫ぶ度に口の中に蛾が入り込んできたのですが。。。
この階段を越えて、最後の車道を横断するとゴールまであと少し。
塩尾寺まで緩やかにアップダウンを繰り返しながら下り続ける登山道。
02:49 塩尾寺 通過。
ようやく山道から開放され、市街地を抜けるアスファルトに。
宝塚の街並みを望み、住宅街を抜けてゴールを目指します。
ゴール横のローソンが閉まっている!!! ガリガリ君が食べれない!!!
03:20 宝塚ゴール 到着。
残念ながら今回はここでリタイア。 あの虫の中を戻る気にはなれませんでした。
思いの外、身体の疲労度は大したことはありませんが、メンタルがダメです。
もう少し涼しくなって、夜の虫が少なくなってから再チャレンジしたいと思います。
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